【EA】この世界からの脱却【EAの使い方:その2】
前回の記事を執筆致しました時点では、頭の中にEAの使い方についての色々な仮説(大体こういう感じではないかといった希望的な見通し)がありましたが、試行錯誤の結果、今後の見通しが立つ程度の成果を個人的には出せたと思いますのでこちらにまとめたいと思います。
【仮説その1】損益曲線を分析すれば何か分かるのではないか
損益曲線にZigZagを適用してみました。
ZigZagの期間によって見え方が全く異なりますので、「恣意的だ」「結果論だ」と叱られそうですが、「好調・不調がハッキリ現れるEA」の方が取り扱いがしやすいように感じてしまうのは私だけでしょうか。
矢印の位置は、ZigZagの直近の頂点を上回って(あるいは下回って)ZigZagの新たな頂点(再描画がなされる未確定のフラフラしている頂点)が描画されたと思われるポイントを選んでおります(正確にどのポイントでZigZagの新たな頂点が描画されるかの確認はとても手間が掛かるため行っておりません)。
では次に、一般(市販)のEAにつきまして、同じようにZigZagを適用してみたものを掲載させていただきます。
カーブが滑らか過ぎて何も分かりません。
比較的カーブがギザギザしていた記憶があるAngel Heart Lonoに適用してみることにしました。
こちらも、どう捉えたら良いのか、取扱いに困るZigZagとなってしまいました。MT4が吐き出す損益曲線では気付きませんでしたが、2010年を境に、明らかに様子が異なります。2009年までは、損益が頻繁に、ある程度の勢いで上下していたということになりますが、こんなにもハッキリと相場が変わるものでしょうか。
【結論】損益曲線とZigZagである程度の事は分かる
但し、カーブフィッティングが行われていない「正直」なEAに限る。
あるいは、カーブフィッティングの適用外であるフォワードに限る。
損益曲線にZigZagを適用する試みはここで一旦終了致します。
【仮説その2】相場は一定期間毎に変化しているのではないか?
今年に入ってから自作したEAは、過去に製作したものも含め、不思議な事にある時期を境に効くようになったり、効かなくなったりするものばかりでした。
自身で製作しているものですから分かるのですが、非常に「正直」なEAばかりです。単純なルールに従ってひたすら試行を繰り返すだけのものです。
そしてその「境目」を詳しく調べてみると下記のようになっていました。
EA | 効いている期間 |
優位性その1 | 2013- |
優位性その2 | 2012-2018? |
優位性その3 | 2012- |
優位性その4 | 2017- |
Z88_H1(前回記事のH1版の方です) | 2012-2017 |
Z88_M15(前回記事のM15版の方です) | 2004-2008 2012-2017(2018)※ または、 2012-2013(2014-2015は停滞) 2016-2017 |
※Z88_M15につきましては、2017年に一旦終焉を迎え、その後2018年にもう一度トレンドを形成しつつありましたが結局失速してしまっています(下図)。
ここでピンと来られた方もおられると思いますが、私も漠然と、もしかして?とは思っておりました。
米大統領選挙の日付 | |
2004年11月2日 | ジョージ・W・ブッシュ |
2008年11月4日 | バラク・オバマ |
2012年11月6日 | バラク・オバマ |
2016年11月8日 | ドナルド・トランプ |
2020年11月3日 | – |
自作EAは全て、米大統領選挙の年か、あるいはその翌年に効力を発揮し始めたり、失ったりしています。(Z88_15に関しては転換点が2004年、2008年、2012年、2016年にあるのは間違いないと思います)
一体これは誰が決めてるんだ?と思ってしまいますが、これは投資家さんが長年肌で感じてきた「そろそろ相場が変わるかもね?」といった空気(総意)に基づいているのではないかと個人的には考えております。ちなみに、私はファンダメンタルズは全くと言って良いほど分かっていない人間ですので、そういった方面からの考察はできません。
従いまして、来年(2020年)は米大統領選挙の年なのですが、これからの相場は難しくなるかもしれません。今まで優位性を発揮していた手法が過渡期に入る可能性があります。但し、4年を越えて効いている優位性もありますし、大統領選挙の翌年くらいまでは優位性を維持する場合もあるようですので、そういった長期に有効な優位性の場合は難なく乗り切れるかもしれません。また同時に、今後数年に渡り優位性を発揮する手法に乗るためのチャンスの時期でもあります。
それにしても、所謂カーブフィッティングを行っていない正直なEAの場合は、相場の変化が損益曲線にきちんと反映されるため、その結果このような今まで分からなかった事も分かるようになり、個人的には、現実を歪めずありのままを受け入れる事の大切さを学んだ次第です。
「聖杯だらけ」のEA業界
EAの販売サイトを眺めていると、どのEAもバックテスト上は綺麗な右肩上がりの損益曲線を描いています。そういった映像に慣れてしまったのか、少し前までは、それは普通の事で、何らおかしいなどとは思っておりませんでした。
もしそのバックテスト通りであるならば、どれも聖杯です。一つだけあれば十分です。所が、フォワードが全く出ません。前回の記事で、リリース後一年で生き残れるのは50%との結果が出ましたが、だとするならば、2年生存率は、単純計算で25%となります。3年では、12.5%となります。そして、同じようなデータは無いかとネットを検索した所、「EAの3年生存率が12%」とのデータを発見しました(先方の記事、大変興味深いです)。計算した理論値とほぼ一致しているではありませんか。
ここで大切なのは、「一年目で既に勝率が50%」、つまり半分と言う事です。たまたま稼ぐEAを引く可能性もありますが、その可能性が一番高い状態でたったの50%なのです。50%の確率のギャンブルを繰り返して、勝てますか?そしてこのギャンブルは、続けるほどに勝率が低下します。
なぜEAは量産されつづけるのか
そもそも、バックテスト通りの性能を発揮しているのであれば、最初に製作されたEAが未だに健在であるはずです。
なぜいつも、稼働を開始して間もなく、次のような言い訳を自分にしなければならないのでしょうか。
・バックテスト上、過去にも停滞期があるので、今はたまたまそういった時期に違いない。運が悪いな。
・EAは長期的な視点で評価しなければならない。今はたまたま調子の悪い時期に違いない。運が悪いな。
・EAというものは、そもそもバックテストほどの成績を出すことはないものである。しばらく様子を見るしかない。
こういった事がある特定のEAだけに生じているのなら分かるのですが、大抵のEAに生じているのは明らかにおかしいです。
そしてEAの出品者たちは、なぜ「稼ぐシステム」を、あんな端金で他人に譲り渡しているのでしょうか。本当に稼ぐのなら、自分で使えば良いのです。
更に、「稼ぐシステム」であるとして販売を行っているにも関わらず、なぜ次から次へと新しいEAを開発して販売を続けているのでしょうか。多少の性能アップなどはあるかもしれませんが、本当に稼ぐのなら、最初の一つだけでも十分です。そして、その最初のEAが、事前に提示されていた通りにきちんと稼いでくれていたならば、購入者側としても次から次へと新しいEAが必要になることは無いはずです。つまりこの商売は、家電が一定期間を経て故障し買い替えが必要になるといったビジネスモデルに似ています。しかし、このEAという製品は家電とは大きく異なり、事前にどれだけ性能を誇大に広告しても罰せられることはなく、また、最初から壊れていても一切保障されることも無いのです。
EAが量産され続け、そして購入され続けていると言う事は、つまり、今までに販売されてきたEAがことごとく使い物にならないものだったということの証拠ではないかと思います。
また、初心者さんについても考えてみると、あのように市販のEAがずらりと並んでいて、普通に購入されている。それを見るとそういうものだと思ってしまっても仕方がないと思います。無責任に商品を勧めるアフィリエイトサイトも跋扈していますし、実はこの世界のほぼ全てのデータが歪んでいるのだということに気付くには、ある程度の時間を要するでしょう。
EAが無くて困るのは誰か?
誰でも楽をして稼ぎたいものです。それを実現してくれる(?)のがEAです。ですから、そのEAがダメ、と言われても、容易に受け入れ難いのも事実でしょう。つまりEA業界を取り巻く問題は、出品者側の良心の欠如だけではないのではないかと思います。つい期待する気持ち、今度こそ、と思う気持ちは私も良く分かります。経済的に余裕のある方の道楽や、夢を買うといった側面から考えると、それも分からない事はありません。「自分は何もせず、ただ稼働していただけでお金が増えた」といった経験は本当に痛快です。しかし、FXをやっている方は、私も含めて、必死に生きている方が大半ではないかと思います。そんな中、このような詐欺的なシステムが横行している今の時代に投資を始めてしまい、運が悪かったとしか言えないと思います。
EAしか頼るものが無い?
投資の世界で安定して利益を上げ続けている方は確実におられます。それはどういった立場の方々でしょうか。
1.EAの出品者(※投資ではなくEAの販売益)
2.ヘッジファンドや投資信託で運用する側、委託する側
3.技術的な穴をねらったもの(HFTやアービトラージ等)
4.裁量
この中で最も多く、かつ、我々が実行可能なのは4.ではないでしょうか。
なお、裁量の世界では、次の二点は常識です。
・「聖杯は無い」が聖杯。
・手法には期限がある。
裁量の世界の方が、EAの世界よりも遥かに真実に近いことを言っていると私は思います。
今後の方針
個人的には今年(2019年)の春ごろから裁量に転向したのですが、その後半年を経て、「投資のパターン」というものが出来上がっており、それをこちらで紹介させていただきます。
(長くなりましたので、次の記事に続きます)